座屈拘束ブレース T-BRB

その他の技術

概要

高性能・高コストパフォーマンスの制振を実現化する巴座屈拘束ブレース

巴コーポレーション座屈拘束ブレース(Tomoe Buckling Restrained Brace)は、耐震ブレース、制振ダンパーとして、優れた性能が保証されています。軸力を負担する鋼製芯材を2枚の座屈拘束材(鋼製枠材+モルタル充填材)で挟み、鋼製枠材どうしを溶接で併合したものであり、面外変形および座屈を拘束した形で芯材を塑性化させることにより、引張・圧縮共に安定した軸力(荷重)―軸方向変形履歴特性を生み出す新しいタイプの座屈拘束ブレースです。

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  • ① :芯材
  • ② :リブプレート
  • ③ :スペーサー
  • ④ :座屈拘束材枠材
  • ⑤ :座屈拘束材充填材

部位別材料表

部位 規格 材料 備考
① 芯材
② リブプレート
JIS G 3106 SN400B 板厚40mm以下
SN490B
大臣認定品 LY225
③ スペーサー JIS G 3101 SS400  
④ 座屈拘束材枠材 JIS G 3101 SS400 □タイプ
JIS G 3444 STK400 ○タイプ
⑤ 座屈拘束材充填材 - モルタル 強度21N/(mmxmm)以上

※一般評定の範囲を示したものであり、個別評定物件についてはこの限りではありません。

神奈川大学から技術導入

本技術は神奈川大学岩田衛研究室から導入し、試作による品質管理手法の確立と新たな性能確認試験の実施による性能確認を実施し、実用化・具現化を図ったものです。

耐震ブレースBA材として評定取得

芯材の降伏荷重まで座屈しないで、安定した履歴特性を示すブレース材(BA材)として、一般財団法人日本建築センターの鋼構造一般評定(ST0129-05)を取得しています。
これにより、耐震設計する場合に、従来ブレースを適用する場合に比べて、Ds値を低く抑えることが可能となります。

T-BRBと従来ブレースの履歴特性の比較
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従来型ブレース
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T-BRB

制振ダンパーとしての適用が可能

芯材を他の部材に先行して塑性化させ、地震エネルギーをT-BRBで集中的に吸収することにより、柱・梁等の主要部材を経済的に設計できます。また、地震後においても、主要部材を健全に保てるため、建物の安全性が確保されます。また、T-BRBを点検、取り替えることにより、修復も容易にできます。
T-BRBは、一般財団法人日本建築センターの鋼構造一般評定(ST0196-03)において、履歴特性モデルおよび座屈拘束剛性とエネルギー吸収能力(累積塑性変形倍率)の関係が認定されています。この結果を活用することにより、制振ダンパーとして用いることができます。

特長

高性能・高コストパフォーマンスの制振を実現化する巴座屈拘束ブレース

T-BRBは、確実な品質管理が可能です。
また、軽量化、自由でコンパクトな接合部を実現化できます。

確実な品質管理

芯材をモルタル等で拘束するハイブリッドタイプの座屈拘束ブレースにおいては、芯材とモルタルの接触面の状態が性能上重要です。T-BRBは拘束材分割型であることから、併合前段階でアンボンド材(目的:芯材と拘束材の間に摩擦力が生じさせない)の貼付状況やモルタル表面の状態を直接確認でき、確実な品質管理が可能となります。これに対し、拘束材一体型の場合は、モルタル打設状況が肉眼では確認できず、必ずしも確実な品質管理が行えるとは限りません。

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アンボンド材を貼付した芯材
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モルタル打設後の座屈拘束材

必要性能に見合ったスリムな外観、軽量化

ハイブリッド型の座屈拘束ブレースのエネルギー吸収能力と座屈拘束材剛性には強い相関関係があります。したがいまして、拘束材分離型の場合には、必要性能に見合った座屈拘束材の設計が可能 となり、これにより、スリムな外観が具現化できるとともに、軽量化が可能となります。

接合部(D型)
(a)スレンダータイプ
接合部(D型)
(b)通常タイプ

自由でコンパクトな接合部

座屈拘束ブレースが所定の性能を発揮するためには、ブレース両端部の剛性確保が重要となります。拘束材分離型の場合は、接合部の幅を座屈拘束材の幅より広くとれることから、特にボルト本数の多い場合は、接合部長さを短く、すなわちコンパクトにすることが可能となり、両端部剛性確保が容易にできます。これに対し、拘束材一体型の場合は、接合部の幅を拘束材の幅より小さくせざるを得ないことから、接合部が長くなり、ブレース全体系での安定問題が懸念されます。

設計概要

高性能・高コストパフォーマンスの制振を実現化する巴座屈拘束ブレース

T-BRBは、整備されたデータを活用し、設計を容易に行うことができます。

芯材

座屈拘束ブレース芯材の形状は、マイナス型(鋼板1枚で構成)に限定されます。 芯材に適用される材質は、低降伏点鋼板LY225、建築用鋼板SN400、SN490の3種類です。
低降伏点鋼板は、制振部材のように大きなエネルギー吸収能力を期待する部材、SN材は、耐震部材あるいはエネルギー吸収能力が小さい制振部材への適用が効果的です。使用に際しては鋼材降伏点のばらつきを考慮する必要があることから、ばらつきの設定について事前に御相談下さい。

座屈拘束材

ブレースが終局状態に達するまでに吸収するエネルギーと座屈拘束材の剛性には相関があります。これに基づき座屈拘束材を設計します。

  • Et  :総吸収エネルギー
  • PY :芯材の降伏耐力(ばらつき考慮)
  • σY:芯材塑性化部の降伏変形
  • PE :座屈拘束材のオイラー座屈荷重

終局状態

塑性ひずみエネルギーが蓄積すると、ある限界でダンパーの耐力が低下します(終局状態)。
耐力低下の原因は、通常は芯材の座屈、局部変形ですが、PE/PYが極端に高い場合には低サイクル疲労破断が生じます。

座屈拘束ブレースT-BRBの適用方法

耐震ブレースや大きなエネルギー吸収性能を必要としない場合には、座屈拘束材を小さく設計することが可能です。(下図-C)

局部座屈
強軸座屈
弱軸座屈
低サイクル疲労破断
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低降伏点鋼

(a)エネルギー吸収能力を
期待する制振ダンパー

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SN材

(b)大きなエネルギー吸収能力を
必要としない制振ダンパー

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SN材

(c)耐震ブレース

実績例

高性能・高コストパフォーマンスの制振を実現化する巴座屈拘束ブレース

T-BRBは、制振ダンパーとして色々な分野で用いられています。

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重層建物
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空間構造物
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鋼橋
2
塔状構造物

T-BRBの性能は、数多くの実験により確認されています

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漸増繰り返し裁荷試験
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低サイクル疲労試験